東京調査兵団だんちょーカドノ・トウフの書記より~④

 11月13日14時20分:初台囲碁クラブ

  マサミツ氏への憎しみを今晩のご馳走で晴らすことを決めた私は、初台囲碁クラブを出て今日の兵舎である世田谷代田に向かった。
 新宿から小田急に乗り換える。目の前の電車が小田急かと思ったらさらに階段降りたところだといわれて焦る。騙されるところだった。関東はとかく我々関西人と豆腐を困惑させる。
 
 世田谷代田で兵舎を一緒にするナゴーヤ地区の戦友、武市氏と合流し、チェックイン。いい時間になったので初台へ再び戻った。
 
 17時30分

 マサミツ氏とココスの前で合流した私たち二人は、すでにココスの中で待っているネモト・アキーラ氏のもとへ向かった。

 ネモト氏は東京で精強な戦士を育てている。「石音」という軍事施設で教官をしている方だ。
 
 彼はいった。「とりあえずごはんどうぞ」と。

 物がわかっている御仁だ。私は一瞬、マサミツ氏をチラリとみて口角歪ませ、醜い笑みを注文表の裏に隠した。

 「武市くん、ここはやはり一番高いものをたのむのが礼g……」 

 「あ、じゃあ私はこれで」

 私が言い切る前に彼は一番安いトマトのパスタを指さした。私は目を大きく見開いて彼を見た。正気かと。

 だが私は彼の横顔と指し示した指先をみて得心した。彼は完全に飲まれている。
 
 このキョウト地区の巨人と、関東の猛者に。

 微かに震える人差し指と、すぐに赤いトマトを摂取させたくなるほどの青い顔が、全てを物語っていた。
 
 私は思った。彼の顔がアンパンマンのように取替可能なら、すぐにトマトをと交換することができるのに。

 彼とは長い付き合いだ、ここは彼の顔を立てようじゃないか。

 「じゃあ、私も同じものを」

 とても心が広くなった気がした。今ならマサミツ氏のことも許せる、そう思ったのがすべての間違いだったことに後で気づくことになった。
 
 食事をしながらトウフ・レポートの話をする。マサミツ氏経由ですでにネモト氏にも読んでいただいていたようだ。

 彼は興奮冷めらぬといった途轍もないパワーと熱意で、私たちを圧倒した。結果的にリスペクトしていただいたようでなによりである。
 資金的な面での弱点などについても道を示してくれた。

 こちらから喋る暇がないほどの勢いと熱意、その姿に私は囲碁界の松岡修造だなと確信した。

 彼がいれば、囲碁界を明るく照らし続けるだろう。

 ただし私は少し後悔した。日焼け止めもってくるのを忘れてしまったことに。まあこの11月の季節に日焼け止めがいることになろうとは私も想像できなかったわけだが。

 少し日差しにあたりすぎたかな、そうおもった頃、13路大会の時間が迫ったのでお開きとなった。

 「じゃあわたしは13路大会の主催なんで先にいきます」

 マサミツ氏は腰を痛めているネモト氏と我々を置いて先にいった。
 
 私は当然、彼がおごってくれるのだろう、そうおもっていた。

 しかし。

 伝票はそのまま置かれていた。残された二人と一丁の周りだけ、静寂と沈黙が訪れた。周囲の喧騒が耳に入らない。広い店内で狭く息苦しい錯覚に陥る。トウフの壁面に、凝固剤がぽたりと落ちる。私の顔を毎日作ってくれているやさしいおばさんの顔が走馬灯のようにフラッシュバックした。

 沈黙を破ったのは武市くんだった。

 「あれ?これマサミツさんの財布じゃない?」
 
 私は一気にマサミツ氏の株をあげた。かっこいいじゃないか。だまって財布を置いていくその姿。ここからだせということか。見直したぜ。これが大人か。そうおもったのも一瞬だった。わたしはこの財布が小銭入れだといことに気づく。

 少々の不安とともに、財布をみた。
 
 中には数十円とポイントカードだけだった。

 そうだ、よく考えてみろ。彼も元はキョウト地区。我々とおなじ関西人。

 思考は我々と一緒じゃないか。一気に熱が冷える。上がった株はバブルのように弾けとんだ。

 つづく。

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東京調査兵団だんちょーカドノ・トウフの書記より~③

 13日12時15分。

 エスカレーターという関西人発見器の罠に引っかかった私は、周囲の生暖かい視線から逃げるようになんとかその場を脱出、初台駅につくことができた。

しばらく歩くと、ココスがあった。今日はキョウト囲碁界のカリスマ巨人、ジュンジーマサミツ氏とここで会う事になっている。

彼はキョウト区において「13路」という兵器で人類を制圧、それにあきたらず今度は東京を13路で征服しようとしているようだ。彼の「13路」は大きな武器である。恐らくこの首都も13路の力でねじ伏せるつもりだろう。

 私は身震いした。そのどこまでも折れぬ13路のこだわりに。

 どこか「郵●民営化!郵●民営化!」といって実現させてしまったコイズーミ元総理の姿とかぶった。彼は民衆をただ「郵政民営化」という言葉だけで「あ、なんかこれいいかも」と思わせて総理になってしまった男だ。若干ベートベンとヘアースタイルがかぶったのもやつの策略だ。

 今日の目的地である初台囲碁クラブも、彼によって植民地支配をされてしまっている。13路囲碁大会という名が完全に彼の洗脳化に入ってしまっていることを表していた。


 偉い人はこういった。時すでにお寿司、と。


 
 私は悔しさを噛み締めながら、「たぶん晩ごはんはココスでおごってもらう事になるだろうから、別のとこで食べよう」そういう汚い心を全面に出して少し離れたファミリーレストランにはいった。(なんて店だったかはわすれた) 
 
 私はそこで「和風ハンバーグなう」とたしかつぶやいて、すぐに初台囲碁クラブに向かった。

 一時に戦友である茨城の強豪兵長、並のアマ氏と会う約束をしていたからだ。並のアマ氏は絵詰碁作家としても有名でマイコミから書籍も出ている。ちなみに私もちょっと書籍の詰碁に関わっている。そこに「友人」として一言書かれている事に年甲斐もなく嬉しかったのを覚えている。

 ということを実際にあって言いたかったのだが、それはかなわなかった。

 会う場所は東京のアマ囲碁界の巨人、永代氏の碁会所という事を電報で並のアマ氏とやりとりしていた。私は13路囲碁大会のHPの写真が永代氏の碁会所だったため、私は今回の13路大会会場である、初台囲碁クラブが永代氏の碁会所だと思っていたのだ。

 そう、ここ初台囲碁クラブは同じ強豪でも、イセさんところの碁会所だったのである。私はマサミツ氏の陰謀に嵌められたのだ。

 どうやら13路大会は碁会所持ち回り制らしく、会場をうつしてやるらしい。

 私は思わず、膝が折れた。スタッフの人が「大丈夫ですか?」と声をかけてくれる。私は大丈夫だ、と言って本当の永代さんの碁会所に電報をかけた。

 並のアマ氏に謝罪し、またの機会にと電報を送った。


 ちくしょう、マサミツ氏め、今日は絶対ココスで一番高いやつを注文してやる、私は憎しみの炎を燃やしながら、安っぽい復讐を心に誓うのであった。

 つづく

 
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東京調査兵団だんちょーカドノ・トウフの書記より~②


 13日・早朝5:30

 私はついに東京は新宿の地に足を下ろした。

 えも知れぬ感動に、身体が痺れる。視界に映るものすべてに心が踊る。一度だけ世界アマの県大会で優勝したことがある。選ばれし戦士が、東京という巨人たちの住む大都市に送り込むことを目的とした大会だ。各県から一人ずつ選ばれ、巨人と戦う栄誉を与えられる。

私はその時、たまたまプロ試験という入隊試験と被ってしまったため、辞退。準優勝のシローヘビ氏が結局私の代わりに送り込まれることになったのだ。私は悔しさと共に巨人と戦わずに済んだという気持ちにどこかホッとしたのを覚えている。

 わかるだろうか、この感動が。いままで東京と縁のなかった私が、ようやくこの地に足を踏み入れることができたというこの気持ちを。

私はしばらく「新宿」と書かれた表札の前で立ち尽くしていた。

バスから降りた戦士たちは、蜘蛛の子を散らすように東京の闇に消えていった。するべきことはみな各自分っているのだろう。彼らの足取りには迷いがない。私は敬礼した。彼らの健闘を祈って。
 
 そして私はおもむろにスマホを取り出し、Twitterに「豆腐関東上陸。関東の方は低気圧と共に飛来する豆腐にご注意ください」とつぶやいたのだった。 

 歩き出した私は、案外大阪と変わらないなという気持ちに安堵していた。そんなに別世界というほどでもない。やがてマックをみつけたので一服する。関東ではマクドのことをマックというらしい。私も巨人に関西豆腐だとバレないようにしなくてはならないため、マックと記すことにする。

 だがこのあと、巨人の巧妙にまで仕組まれた罠にハマることとなる。

 マックで一息ついた私は、新宿駅前にあるマンボーという満喫で、バガボンドを感涙するほど満喫して、今回の目的地である「初台」に向かった。

 同日11:45分

 初台には京王線に乗らないといけないらしい。表札をみて京王線に向かった。

 私が途中にあるエスカレーターに乗ったその時だった。

 皆が、左側に立っている中、私は右側に立っていたことに気づくのに30秒かかった。

 そうだここは関東、エスカレーターは左側に立ち、右側を空けるのだ。私は巧妙に仕掛けられたエスカレーターという罠に見事に引っかかり、約30秒もの間巨人たちに私が関西豆腐だという情報を公開してしまったのだ。 

私は冷や汗が止まらなかった。どこかここは同じ関西の地と変わらないと、戦場ではないと心が油断していた。エスカレーターは関西人・豆腐発見機なのだ。嘘発見器よりも手ごわい。

 と、同時にやっぱりここは関東なのだという気持ちに心が震えるのだった。


 つづく。、

 
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「特別編①」東京調査兵団だんちょーカドノ・トウフの書記より~


 すべては一本のメッセからはじまった。

 「一度お話したいのですが」

 ほう、どうやら「へっどはんてぃんぐ」というやつらしい。トウフのどこに「へっど」があるのか、という無粋な質問はやめてほしい。私は「へっど」にぶつけられる側のモノだからだ。

 それにしても、最近よく聞く名前の会社だ。

 私は今まで縁のなかった東京に行ってみたいという気持ちと、この会社の活動の興味も相まって、「じゃあこっちから行きます」

 と返信するのだった。カドノ・トウフ極秘レポートと一緒に。

 出発日:当日12日:16:30
 
 ブログを更新し、子ども教室の開演である。
 
 東京という巨人たちが住む大都市に行く前に、私はまずこの小さな巨人たちと戦わねばならない。

 彼らはとても凶暴で、何をするかわからない所がある。

 油断ならぬし、体力も大きく奪われる。「せんせぇー」などと言いながら、幼稚園の子が背中に飛び乗る。両の手はすでに彼らの腕に取り込まれた。見事なチームワークだ。これなら大抵の巨人でも相手にならないだろう。

しかし来週、また入門者がくることになるとの話を聞き、その子が入れば全員で22人になるという現実に思わず戦慄するのであった。

同日:18:30

なんとか教室を終了させた私は、仲間たちと別れ、一人三宮の夜行バス集合所へ向かった。

集合所には、すでにたくさんの「仲間」がいた。彼らも東京へ送り込まれる戦士なのだろう。みな引き締まったリーマン顔・疲れきったリーマン顔をしている。中には世間話をしているおばちゃん集団もいたが、実は彼女らは、より強力なこちら側が送り込む「巨人」である。

大阪の「進撃のおばちゃん」の力で、関東の品のいいおばちゃんを駆逐するために送り込まれるのだ。タイムセールではおばちゃんたちの肉壁をかき分け、進撃する。彼女らが過ぎ去ったあとには、草の根すら残らぬ。

私は思う、彼女らを送り込まねばならぬほど、東京という都市は危険なのかと。

同日:20:50

時間がきた。私は案内スタッフのあとをついていった。初めての夜行バスは、思ったよりも狭く息苦しい。これは今日眠れないなと私は覚悟を決めるのだった。

同日:21:50 大阪到着

大阪からまた戦士たちが乗車した。21時58分、出発ギリギリに、小太りの中年戦士が私の隣に座った。息を荒くさせている所をみると走ってきたのだろう。私はこの戦士を暖かく向かい入れることにした。

13日0:00

日付が変わる頃にはバスは消灯され、戦士たちはつかの間の休息を味わっていた。私の隣の中年戦士もだ。

多少のことは我慢できる。そう思っていた豆腐だ。もちろん今日は寝るつもりもない。この状況下で眠れるほどトウフはできていないからだ。

ふと足を担当している角に、中年戦士の足が当たった。大きく開いら足が、私のスペースを侵食し狭める。

口からは「んごぉーーーーっ」とムンクの叫びが聞こえてくる。

私はこれから巨人たちと戦うというのに、このように振る舞える彼を尊敬した。私なら緊張で眠れない。明日には巨人たちに喰われて消えてしまうかもしれないというのに。

同日4:30

最後のサービスステーションだ。ここを抜ければいよいよ東京の新宿だ。

気を引き締める。囲碁のプレゼンがどこまで関東の巨人たちに通用するのか、よりも、関西の笑いがどこまで通用するのか、カドノ・トウフはただそれだけが心配だった。



同日5:30

そしてトウフは、関東に上陸した。


つづく

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プロフィール

豆腐の角

Author:豆腐の角
ども~こんにちは。豆腐の角と申します。

棋力は東洋囲碁八段~九段を行ったり来たり程度。兵庫県を中心に、関西で囲碁を教えて生活しています。

現在の所、ネットはカフェトークをhttps://cafetalk.com/tutors/profile/?id=36141&lang=ja参照ください。

リアル個人指導一時間2500円。棋譜添削は三局分を簡単にまとめたものを千円でやっています。(需要の状況により、値上がり変更があるかもしれませんが、ご了承ください)
入門は30分500円から。お気軽にどうぞ。

カフェトークはちょっと無理!でも豆腐は信頼できる!という方は、豆腐とご相談で直接やりとり契約もおkです。生徒さんとの信頼の元やらせていただいております(´・ω・`)

 

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